若手研究者の成長を阻む、日本の博士課程・ポスドクの実情(第1回)
ポスドク問題ってご存知ですか?
というかそもそもポスドクって何?から始まる方も多いかと思います。名の知れた大学出身者や大き目のゼミや研究室の方はご存知でしょうが、ほとんどの方は初耳な話かなとは思います。
でも僕は結構重要な問題だと感じていて、それについて研究しようと考えています。
博士を取った後の世界が不透明
僕は大学時代、理系でエンジニアになる道を勉強していました。理系で技術者を目指すなら大学院に進むのが当たり前だと聞いて、ほとんど疑うこともなく大学院に進んだのを覚えています。
ですが、大学院で進んだ研究室にいた博士課程の先輩やポスドクの方を見たとき、このまま研究者の道に進む事への不安を感じ、民間企業に就職してお金を稼ぐ道を選択しました。
これから先輩達が進んだ博士課程やポスドクがどうして先行き不透明に見えたかについて説明していきます。
大学院以降のキャリア
大学院は2年間の修士課程(博士前期課程)と3年間の博士課程(博士後期課程)に分かれており、それぞれ修了すると「修士」、「博士」の学位を取得できます。将来研究者としてのキャリアを積むなら博士はその免許のようなものと言われます。企業でエンジニアとしてのキャリアを積むなら修士でも充分というのが一般的な意見です。
と、ここまでは普通の話。
問題は、研究者のキャリアパスが実は間口が少ないのです。助教→准教授→教授という大学教員コースに乗るんじゃないかと思われますが、実際には全体の2割ほどのようで、しかも運良く求人があったらという不確かさです。
同じく運の良い博士だと、企業からの求人で就職する方もいますが、企業側からしたら博士は専門性は高いけど、研究に明け暮れてるためにコミュニケーション力やビジネスマナーが同年代のビジネスマンと比べて低い傾向にあり、修士ほどニーズはありません。というかほとんどニーズがありません!
企業にも就職できず、教員コースも埋まってる博士はどうなるかというと、それが「ポスドク」というものです。
ポスドクという受け皿
ポスドクというのは、任期付きの研究職のことで、正規雇用の教員とは違い、非正規雇用の職になります。ポスドクになった博士は、まずは職に就けたけど、その後正規雇用の求人が見つかるまでそのポスドクの職を転々とする傾向にあります。
昔は博士になる研究者はごく限られていましたが、1990年代以降国の方針で博士を増やす方向になり、でも大学教員の数はもちろんほとんど変わらないので、正規雇用になれず路頭に迷う博士が増え、その受け皿としてポスドクという職が機能してきました。ですが、結局正規雇用のポストが空かないとポスドクをはしごするようになり、気付いたら40代を迎えてしまう、ということになります。
これからの日本の科学技術を支えていく若手研究者の多くは、こういう不安と常に背中合わせの中で研究に明け暮れていくわけです。このような不安の中では、伸び伸びとした研究ができるはずがありません。
面白い動画があるので、一度ご覧ください。
怖くないですか!!?これが日本の博士課程・ポスドクの実情です。この不安が軽減したら、きっと若手研究者もより研究に集中して、伸び伸びと成果を作っていけるはずです。
今、書籍や雑誌などを集めている最中ですので、また届いて読んで、この問題について少しずつ言及していきます。